昼蛙トランスレーション

主にゲーム・音楽関連の翻訳トレーニング置き場。

"Ori and the Will of the Wisp"付録 "The Flora and Fauna of Ori" 日本語訳【①動物編】

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記事まえがき


オーストリアはウィーンに本部を構える多国籍デベロッパー集団、Moon Studiosが誇る傑作メトロイドヴァニア"Ori"シリーズ。

まぁシリーズといっても2作しか出てないんですが。

 

1作目 "Ori and the Blind Forest"(2015年) は、わずか10人のチームで制作したとは思えないキャラクター、グラフィック、サウンド、何より「ゲーム」としての面白さでアクション好きを唸らせました。

その後、一気に人員を8倍に増やした同スタジオは、あらゆる面でグレードアップを果たした2作目 "Ori and the Will of the Wisp"(2020年) をリリース。すでに1作目の成功によって、インディーゲーム界隈で注目の的になっていたこの2作目は、2020年内にはNitendo Switch版が発売され、それに合わせて "Ori Collector's Edition"も登場しました。シリーズ2作のパッケージソフトセットに以下の特典を盛りに盛った豪華仕様です。

https://www.iam8bit.com/collections/ori/products/ori-collectors-edition

【特典内容】

  • 開閉ギミック式化粧箱
  • ステンドグラス製アートピース
  • 生物ガイドブック“The Flora & Fauna of Ori”
  • 未公開画像を含むスケッチブック
  • アートカードセット
  • 蓄光ハードエナメルピンバッジ
  • "Ori"シリーズ2作のサウンドトラックデジタルダウンロードコード

うーん、豪華。

さて、本エントリはこのCollector's Editionに収められている特典のひとつ、ニウェンに生息する動植物を紹介するブックレットの"The Flora and Fauna of Ori -A Field Guide-" の内容を私訳したものです。

 

構成は全部で動物(モンスター)15種、植物14種を1ページ1種ずつ紹介するというもので、動物編は武芸家のオファーが、植物編は庭師のトゥリーが、それぞれの語り部となっています。 

 

【注意】

・日本語名は極力公式の名称を使おうとしましたが、名前がゲーム中に登場しないものはこちらで勝手に訳した名称(赤で記載)をつけています。

語り部の口調もゲーム日本語版のものに近くなるようにと考えました。ゲーム内テキストを通しての印象としては、オファーは快活なおっちゃん*1、トゥリーはちょっとニヒルだけど植物に対する情熱は抑えられないオタクというのがので、できるだけそうなるようにしています。ただ、なにぶんあの2人はセリフの量もそこまで多くないので、解釈違いの際はご容赦ください

 

今回は動物編です。オファー師に登場していただきましょう。(画像はFandomより引用)

00—Introduction  (はじめに)

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おお、お前さんか! やっとこさ、ニウェンにご到着だな。

あの青葉茂る、のどかな湧水の空き地から出たのだ。まさに門出といえような。

だが、忠告しておかねばならんことがある。ニウェンの全部が、ああいう居心地の良いところばかりというわけにはいかんぞ。むしろ、ケモノどもがウヨウヨしておる場所だらけでな。迂闊に踏み込めば奴らの今晩のおかずはお前さんよ。

それでも、お前さんはツイておるわ。ここにおるじじいはな、有りと有らゆるケモノとやり合うてきた剣の達人なのだよ。どうすりゃいいかも教えてやれるはずだ。この指南書を頼りに、お前さんが向かう場所へ無事たどり着いてくれれば良いな。武運を祈るぞ! 

《武芸家オファー》

 

01—Lushworms (シナリムシ

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土の中で待ち伏せし、おとなしそうな獲物が通る気配を察するや目にも留まらぬ速さで現れる、獰猛な虫だ。

巣を離れてこないからと言って、油断して良いということにはならんぞ。奴らときたら、牙の届かぬ相手にゃ酸性の胆汁を吐きかけてくるのだ。

近頃はずいぶんと数も増えたからな。足下に気をつけて、油断するでないぞ!

 

02—The Slugs (ナメクジ)
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柳樹が朽ちてしもうてからこの方、我が物顔であそこを這いずり回っておる汚らしいウスノロどもだ。

縄張り意識が異常に強くてな、侵入者を食い止めるためなら何をしでかすかわからん。

だがまあ、お前さんのように手慣れた冒険者なら、手に負えんこともまずあるまい……ああ、爆発し出す奴にだけは気をつけるのだぞ!

 

03—Winged Critters (羽虫)

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力はなくとも、忌々しさにかけては並外れておるのが、スキートだのスキーター(より小型でワラワラと集まっている近縁種)だのだ。

いつの間にか小屋の中に1匹入り込むや、ブンブンいう音が止まずに朝まで眠れんかったことが何度あったか!

ニウェンがあの羽畜生どもに悩まされずにおれる日なんぞ、望むだけむなしいことよ。何しろ、あんなに増えるのが速い生物も見たことがないからな。

 

04—Water Critters (水中生物)
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思いっきり戦った後は、のどかな水辺で汗を流す。たまらんだろう? だが、ニウェンでは水も荒野のごとし。気安く潜ってはおれんぞ。

羽むくじゃらのトックめ、釣りの腕はなかなかのものかもしれんが、あやつはツイておるのよ。サカナどもの餌食になっておらんというだけでな。サカナがおらんと思ったら水ヘビが襲ってくるぞ。

これ以上はきりがあるまいな? まぁそれでも、深淵とは危険なもので、だからこそ美しい。わしから言えるのはそれだけよ。

 

05—Horn Beetle (ツノカブト
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わしもいっぱしの武芸者だ。あれだけの猛烈な武器捌きを頭で繰り出せる者には、ケモノだろうと脱帽せざるを得んよ。お前さんもぜひ見習ってはどうかね。

「滅び」が訪れる前は、ニウェンの甲虫どもにとって地虫がご馳走であった。柔らかな、森いっぱいに敷き詰められた絨毯のような葉っぱの上を、楽しそうにほじくっておったよ。

しかし、森は変わってしもうた。それで奴らも穢れたカビやら、もっとろくでもないものを食うようになり、その環境に劣らず危険なものになってしまったというわけだ。

 

06—Mantices (トウロウ
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真に優れた剣士は、頭の後ろに目がついているという。だが、これだけ飛び跳ねる連中を相手にするなら、上にも目がついとらんと、姿を捉える前に喰われてしまうわい。

その昔、巨大なトウロウがルマの地を跳ね回り、いくつもの窪みを残していったそうだ。今あの地に池があるのは、その窪みに水が溜まった結果らしい。

そりゃもう件のトウロウには頭が下がるというものだ。しかし、頭は下げても目は常に上を捉えておかんとな。

 

07—Golek (ゴーレク)
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グロムというわしの親しい友人が、よく嘆いておった。自分の仲間たちの醜態が、どれほど全ゴーレク族の面目を潰していることかとな。

残念だが、一度水晶熱にかかってしもうたゴーレクの破壊衝動を鎮めるのはかなり難しい。しかも採鉱で鍛えただけあって、そら恐ろしい打撃を振るいおるぞ。とにかく、奴らにはうかつに近寄らんに越したことはないようだ。

 

08—Eyed Echo (ヨツメコウモリ

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どんな難局であれ、たいていの場合は愛用の剣さえあれば切り抜けられるだろう。だが、相手が「音」だった場合はどうかな。

苔むす地下森においてヨツメコウモリがかくも脅威となりうる所以は、そこなのだ。奴らの発する金切り声は耳をつんざく。そのやかましさは、わしらの中で最強の者をして「あれがいるなら洞穴に入るのはやめじゃ」と言わしめるほどよ。

 

09—Crystal (クリスタル)

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柳樹の終の地というのは何とも奇っ怪なものよ。薄っ気味悪く紫色に光るわ、がらんがらんと金属のような音が鳴るわ、小部屋に入りゃ自分の姿が映ったと思ったら分裂したり歪んだりするわ……考えるだけで総毛立つ。

まあ、空間自体は不気味なだけで恐れるものでもない、あそこに浮いておるクリスタルに比べればな。あれから放たれる光線の破壊力たるや!

 

10—Spiderlings (子グモ)

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もし、苔むす地下森におるクモの子らが威嚇するような動きをしても、気を悪くせんようにな。

モラの子の8本足どもときたら、よそ者が現れたらとりあえず跳ねてまとわりついてくるものだ。ただ、それも母を危ない目に遭わすまいとの一心でしておる。無害だと分かってくれさえすれば、実に人なつっこいものよ。

だが、母親の方と親しくなろうとした者はおらん…というか、あれと会って生きて帰った者の話を聞いたことがない。

 

11—Bulging Hover (フクレウキムシ

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沈黙の森に棲むフクレウキムシ。ニウェン中の生き物を見渡しても、こいつほど訳の分からんものはまずいなかろう。

動きはトロいしフラフラしておる。驚かせればプカプカとそっちへ行って……あとはドッカンというわけよ。

あんな調子でよくもまあ今まで絶滅せずに済んでいるものだ。まさに自然の驚異、というやつであるな。

 

12—Mortarworm (ウチアゲムシ

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修行の中で、隠密を旨とする流派というものを見たことがある。さっと攻撃したら、するっと影の中に隠れるのだ。

こうした技術にかけては、ウチアゲムシの右に出る者はおらん。何しろ奴らは影も使わずに見事に隠れおおせるというのだからな。

この地がもたらす無数の脅威から身を守るには、「いない」のが一番、ということもあるのだ。

 

13—Spitting Harrower (ツバキオドシ

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戦士たる者、いかなる窮地にも冷静さを失わぬようにせねばな。とはいえ、相手から唾でも吐きかけられば、売られた喧嘩は買わざるを得ん。

まあニウェンのケモノどもに、作法なんぞ期待するだけ無理だとは思うわい。だが、たまには正々堂々とした決闘をしたいというのも、無理な話なのかのう?

 

14—Leapers (リーパー)

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狭い空間でリーパーに「鉢合わせ」ることほどまずいことはそうそうない、などと言う連中もおるな。そやつらはどうやら、狭い空間でリーパーに「挟み撃ち」にされたことがないようだ。もったいない。

ちっぽけなケモノではあるが、いかなる達人も油断できぬ抜け目なさは大したものよ。

何でも、「滅び」に飲み込まれんように飛び跳ねることを覚えたのがリーパーの起こりだそうだが、今となってはすっかりあのゆがんだうろ穴で居心地良さげにしておるぞ。

 

15—Sand Critters (砂中生物)

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吹きさらしの荒れ地で危険なケモノに襲われることはないと思っておるな。確かに、あんな荒涼たる土地では、生きていられる生物などあるまい。

と言いたいところだが、スナオヨギ(dune sifters)やコオヨギ(sifterlings)といった奴らは生きておる。というかむしろ我が物顔に地面の下を縄張りとし、流砂の中へ不用意に入り込む者を災いをもたらすのだ。

 

 

後編【植物編】はこちら。

irisono-mommy.hatenablog.jp

 

*1:最初はわりと武骨な武人っぽい言葉遣いだと思って訳しました。が、ゲーム内でもこのブックレットでも、このどうも英語セリフが他キャラのセリフに比べて、圧倒的に省略形が多いことに気づき、「これはかなりフランクなキャラだな」と思い至りました。