- 記事まえがき
- 00—Introduction (はじめに)
- 01—Sela Flowers (セラの花)
- 02—Blue Moss (アオゴケ)
- 03—Lightcatchers (ヒオイソウ)
- 04—Moonblossoms (ツキマチソウ)
- 05—Spring Plants (ハルカソウ)
- 06—Ancestral Trees (長老樹)
- 07—Greenlings (コミドリソウ)
- 08—Bubbler (アワハキモ)
- 09—Shy Anemone (ウチキンチャク)
- 10—Snap Traps (クマバサミ)
- 11—Tongue Grabbers (シタヅカミ類)
- 12—Mouldwood Mushroom (チカモリダケ)
- 13—Bell Tree (ベルの木)
- おわりに
記事まえがき
オーストリアはウィーンに本部を構える多国籍デベロッパー集団、Moon Studiosが誇る傑作メトロイドヴァニア"Ori"シリーズ。
まぁシリーズといっても2作しか出てないんですが。
1作目 "Ori and the Blind Forest"(2015年) は、わずか10人のチームで制作したとは思えないキャラクター、グラフィック、サウンド、何より「ゲーム」としての面白さでアクション好きを唸らせました。
その後、一気に人員を8倍に増やした同スタジオは、あらゆる面でグレードアップを果たした2作目 "Ori and the Will of the Wisp"(2020年) をリリース。すでに1作目の成功によって、インディーゲーム界隈で注目の的になっていたこの2作目は、2020年内にはNitendo Switch版が発売され、それに合わせて "Ori Collector's Edition"も登場しました。シリーズ2作のパッケージソフトセットに以下の特典を盛りに盛った豪華仕様です。
https://www.iam8bit.com/collections/ori/products/ori-collectors-edition
【特典内容】
- 開閉ギミック式化粧箱
- ステンドグラス製アートピース
- 生物ガイドブック“The Flora & Fauna of Ori”
- 未公開画像を含むスケッチブック
- アートカードセット
- 蓄光ハードエナメルピンバッジ
- "Ori"シリーズ2作のサウンドトラックデジタルダウンロードコード
うーん、豪華。
さて、本エントリはこのCollector's Editionに収められている特典のひとつ、ニウェンに生息する動植物を紹介するブックレットの"The Flora and Fauna of Ori -A Field Guide-" の内容を私訳したものです。
構成は全部で動物(モンスター)15種、植物14種を1ページ1種ずつ紹介するというもので、動物編は武芸家のオファーが、植物編は園芸家のトゥリーが、それぞれの語り部となっています。
【注意】
・日本語名は極力公式の名称を使おうとしましたが、名前がゲーム中に登場しないものはこちらで勝手に訳した名称(赤で記載)をつけています。
・語り部の口調もゲーム日本語版のものに近くなるようにと考えました。ゲーム内テキストを通しての印象としては、オファーは快活なおっちゃん、トゥリーはちょっとニヒルだけど植物に対する情熱は抑えられないオタクというのがので、できるだけそうなるようにしています。ただ、なにぶんあの2人はセリフの量もそこまで多くないので、解釈違いの際はご容赦ください。
【①動物編】はこちら。
半年以上空いてしまいましたが、今回は植物編。園芸家のトゥリーにお願いしましょう。
00—Introduction (はじめに)
へえ、旅人か、よろしくな。
俺は園芸家のトゥリー。バウアの峻峰のふもとに住んでたんだが、凍りついちまってさ。
俺も家を離れるのはつらかったけど、おかげでニウェン中まわって、驚くほど多種多様な植物をこの目で見て回れたよ。水源地に青く輝くツキマチソウから、闇黒の地下道にそびえる荘厳なベルの木まで、全部見てひとつひとつじっくり調べてきた。
調べたものはこの図鑑にまとめてある。これからそいつを使って、冒険に役立つ確かな情報を教えていくよ。
園芸家 トゥリー
01—Sela Flowers (セラの花)
セラの花はニウェンの自生種で、長老樹の根元あたりの、暖かい日陰を選んで咲くんだ。
3枚1組の輪生ってところはコミドリソウと同じっちゃ同じなんだが、並べてみりゃ全く似てないもんさ。
セラの花ってのはとにかく世話が焼けるんだ。お気に召さない土地には…まぁ、意地でも咲いちゃくれない。
でも、手入れの仕方がうまくいけば、10倍返しでご褒美をくれるのさ。
02—Blue Moss (アオゴケ)
この愉快なコケの仲間が俺はいちばん好きかもしれないな。
上向きだろうと下向きだろうと、アオゴケはおかまいなしに生えている。どこにでもくっつくし、何でもくっつけられるんだ。
俺の調べたところじゃ、まるまるゴーレク1人の体重を支えられる。すごいだろ? それなのに、俺の部屋の天井に張り付いてたゴーレクの奴にはこのすごさがわかってないみたいだ。
03—Lightcatchers (ヒオイソウ)
このおかしなつりランプのような球にはどこか、俺を惹きつけてやまないところがある。
発光や蓄光の仕組みがどうなっているのか、あのぴったりと閉じた花弁の中から秘密を探り出せたら良いんだがなあ。
ただ、ひとつだけ確かなことがある。ヒオイソウは、ニウェンの自生種ではないんだ。遠く離れたニブルの島にさえ存在していたという話を聞いたことがある。そこからやってきたっていうんだろうか?
04—Moonblossoms (ツキマチソウ)
来る夜も来る夜も観察を続け、ついにツキマチソウが実際に咲くのをこの目で見たんだ!
開花は完全な満月の夜に限られるみたいなんだが、ちょっとでも曇っていれば咲かないようだ。
あの花にはたまげたね、苗の倍はあろうかという大きさで、ルマの緑地の植生にも負けない鮮やかさだぞ。
確かに、待つだけの価値はある。
05—Spring Plants (ハルカソウ)
ハルカソウがはるか高い所へ上がるのにうってつけの手段だってことは誰でも知っている。でも、こいつがハルカソウという名で呼ばれる本当のわけを覚えている奴はいるかな。
このプリプリとした花は、毎年春になると全体が白くてまん丸い綿毛に姿を変えるんだ。で、その無数の小さな種は風に乗ってはるかな空へ放たれるってわけさ!
まぁ、ニウェンの中にはもうずっと春が来ていないところも、あるんだけどな。*1
06—Ancestral Trees (長老樹)
キィが言っていたよ。長老樹っていうのはだいぶ前にニウェンから姿を消してしまった精霊たちの残滓が集まったものなんだと。
昔はその森がどこまでも広がって、空き地も水源地もインク沼も全部覆い尽くしていたとか……想像つくか? 今じゃ数えられるくらいしかないもんな。
いや、ひょっとしてお前のような精霊が戻ってくれば、眠れる光も目を覚ましたりするかな?
07—Greenlings (コミドリソウ)
上に立ってれば元気になれるコミドリソウだが、最近わかったことがある。あれは口に入れたら、まったくの逆効果になってしまうんだ。
試しに、あのたおやかな青緑色の花弁を煎じて、ハーブティーに混ぜてみた。こんな素晴らしい植物の効能がもっと得やすくなったら良いと思ってさ。そしたらまぁ三日三晩、猛烈な腹痛にやられてしまったね。
薬としても毒としてもあんなすごい力を持ってるなんて、まったく、何てゾクゾクする草なんだ!*2
08—Bubbler (アワハキモ)
俺もなかなか信じられないんだが、調査の結果はっきりわかったことがある。
アワハキモは、その中に小魚が群れでまるごと棲みついている。そいつらに内部を突っつかれると、なんと「しゃっくり」するんだ!
ヒックヒックというごとに例の泡を吐き出すなんて、面白い生き物だよ。そんなこと植物にできるなんて、想像もできないだろ?
アワハキモ……あれは植物、だよな?*3
09—Shy Anemone (ウチキンチャク)
バウアの峻峰にあった家を離れてから、目もくらむようなルマの緑地には何度も訪れていた。けど、ルマにそんなはにかみ屋の植物がいると気付いたのはつい最近のことだ。
最初はただのイソギンチャクだと思ったんだ。ところがそれで背を向けたとたん、どでかい「花」が光りながら開くのに気付いて、そこで間違いに気付いた。
あの花びらが閉じる前に、もしかしたら種をつかみとれるかもしれないな。あれだけキレイなんだ、持って帰りゃ森の空き地も活気づくんじゃないか。*4
10—Snap Traps (クマバサミ)
俺の故郷、バウアの峻峰にクマバサミという植物が自生している。厄介なやつだが、正直に言おう、俺はこいつにちょっと惚れこんでるんだ。
いささか短気な性質で、俺は山のあちこちで何度かこいつに挟まれるのを身をもって味わってきた。でもな、辛抱強さと強い決意、それに数匹のスキートを用意していれば、こいつを馴らすことだってできるんだ!
母親には分かってもらえなかったな…いや、いいんだけどさ。植物のくせにこんなに歯があるやつは、そうそういないはずだよ。*5
11—Tongue Grabbers (シタヅカミ類)
俺も昔は、毎朝ギジエソウに引っ張り上げてもらって山の頂上まで登ってたものさ。早くに行きゃ、あっちの丘の向こうから黄金色の日の出が見れるんだ。もうずいぶん昔の話だよ。
今の俺じゃちょっとでかすぎてギジエソウには引っ張れないよ。あれはもともと、モキみたいにもっと小さな獲物が油断しているのを捕らえるようにできてるから。
まぁ、朝は日の出より夢の方が見たいっていうのもあるかな。*6
12—Mouldwood Mushroom (チカモリダケ)
この光輝くキノコに「地底の星」というあだ名が付けられているのも、おかしいことじゃない。本当に星みたいだ。苔むす地下森の暗がりに迷い込んだら、こいつを照明にしたり道しるべにしたりするんだからな。
地下森にはいくらでも生えてるこのキノコだが、地上でお目にかかったことは一度もない。どうやら外側の肉が薄くて、日光を浴びたら傷んでしまうようだな。
13—Bell Tree (ベルの木)
俺も以前なら、ベルの木の地下深くに広がる根の途方もない大きさだとか、吊り下げられた花の不気味な美しさだとか、そんな話を聞いてもすぐ忘れてたもんさ。でも、この目で見ちゃったらもう忘れられないんだよ。
節くれ立った根は本当に地下道じゅうにびっしりと広がってたし、花は美しいだけじゃなく打てば音を出す。そして、花ごとに別々の音階があって、一度鳴ったら耳から離れやしないんだ。
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おわりに
以上になります。
本ゲームにはすばらしい公式アートブックがありますが、いつの間にやら海外fangamerでの取り扱いが終わっていますね。検索して最初に出てくるのが海外Amazonで68650円という暴騰っぷりで震えてしまう。
日本語版とか、出たらいいですよねぇ……(切実)。
では。
*1:"spring"で「バネ」と「春」をかけたネーミングなので、日本語に直すとなかなかぴったりした訳にならない。なので「はるかに飛ばす」と「春の訪れ」をかけるという苦肉の策で対応。
*2:"Green"の後に「〜の子」を意味する"ling"が付いているのでとりあえずこんなネーミングを(モラの子供たちも"Spiderlings"だし)。ちなみに英単語としての"greenling"は魚のアイナメを意味するらしい。たぶん関係ないな。
*3:水中植物なので名付けるなら「藻」なのかなぁ、などと。
*4:"Sea anemone"=「イソギンチャク」と、"Shy"をかけた言葉遊びのネーミング。三日間くらいウンウン唸って捻り出したのがこちらで、正直この記事を書く中で一番苦しかった。公式ーーーっ!こいつにイカした名前をつけてくれーーーーっ!!
*5:"Steel trap"=「トラバサミ」をモチーフにした植物だと思われる。原生地の主であるバウアがクマなので、こんなネーミングになってしまった。
*6:おそらく"Tongue Grabber"の小分類に"Lure(=擬似餌) Plant"があるのかと。